▷イソフラボンとは?
大豆などのマメ科の植物に多く含まれるイソフラボンは、ポリフェノールの一種です。女性ホルモンであるエストロゲンと似た働きをすることが知られており、ホルモンバランスの乱れによる不調を整える効果が期待されています。
▷エストロゲンとは?
エストロゲンは、卵巣や卵胞から分泌される女性ホルモンの一種で、妊娠に備える役割を担います。また、肌にハリや潤いを与えたり、髪の成長を促進したりするため「美肌ホルモン」とも呼ばれています。さらに、代謝の向上や血管・骨の強化にも関与しており、月経終了後から排卵日までの間はエストロゲンの分泌が増えるため、体調が安定しやすいとされています。
思春期以降に分泌量が増えるエストロゲンですが、更年期を迎えると減少してしまいます。食事や飲み物からエストロゲンそのものを摂取することはできませんが、イソフラボンはエストロゲンと構造が似ていることから「植物性エストロゲン」とも呼ばれ、エストロゲンと類似した作用をもたらすとされています。
▷イソフラボンの役割
イソフラボンには、更年期の不調の緩和、骨粗しょう症の予防、乳がんや前立腺がんなどホルモン関連の疾患予防といった効果が期待されています。さらに、イソフラボンを多く摂取する人ほど、乳がんや前立腺がん、脳梗塞、心筋梗塞のリスクが低いという研究結果も報告されています。
▷イソフラボンを含む食品
イソフラボンを豊富に含む食品の代表格は大豆です。イソフラボンは豆類に含まれる成分ですが、他の植物にも含まれるため、大豆由来のものは「大豆イソフラボン」と表記されることが多いです。
日本では、醤油、味噌、豆腐、納豆、きな粉、湯葉などの大豆食品が豊富にあり、豆乳も広く飲まれるようになりました。近年では、大豆を肉のように加工した「ソイミート(大豆ミート)」も普及しています。
また、豆腐は中国や韓国、ベトナムなどでも親しまれています。欧米では、FDA(米国食品医薬品局)が1999年に「大豆に含まれるタンパク質が心臓病の発症リスクの軽減につながる」と発表したことで、大豆食品が広く普及しました。
日本では、大豆食品が日常的に摂取されており、欧米人に比べて大豆由来のイソフラボン摂取量が多いと考えられています。厚生労働省の2002年の国民栄養調査によると、15歳以上の日本人のイソフラボン摂取量は1日平均18mgであり、1975年の調査と比べても大きな変化はありません。
以下は、文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」およびその増補2023年版を基にした、イソフラボン含有量が多い豆類ランキング。(数値は100gあたりのイソフラボン総量の目安)
1. 大豆 … 約120〜200mg
2. きな粉 … 約200〜250mg
3. 黒大豆 … 約150〜200mg
4. レンズ豆 … 約5〜10mg
5. ヒヨコ豆 … 約1〜5mg
6. そら豆 … 約0.5〜2mg
7. あずき … 約0.5〜2mg
きな粉は大豆を焙煎・粉砕して作られるため、重量あたりのイソフラボン含有量が特に高くなります。また、豆腐・納豆・豆乳などの大豆製品にも豊富に含まれています。
▷吸収しやすいアグリコン型
食品成分表には「大豆イソフラボンアグリコン」と表記されることがあります。大豆イソフラボンは通常、糖が結合した「配糖体」という形で含まれていますが、腸内で糖が外れると「アグリコン型」となり、体内に吸収されやすくなります。
アグリコン型のイソフラボンは、味噌や納豆といった大豆発酵食品に多く含まれています。最近では、大豆イソフラボンアグリコンを含む発酵豆乳などの食品も登場し、より効率的に摂取できるようになっています。
▷イソフラボンの摂取量について
食品安全委員会は、「特定保健用食品などに含まれるイソフラボンを日常の食事に加える場合、大豆イソフラボンアグリコンの摂取量を1日30mg以内に抑えることが望ましい」と注意喚起しています。また、子どもや妊娠中の方が通常の食生活に加えて摂取することは推奨されていません。
しかし、大豆食品そのものは安全性に問題がなく、発酵食品や飲料、調味料などさまざまな形で日々の食事に取り入れることができます。毎日の食卓にバランスよく取り入れながら、イソフラボンをおいしく、楽しく摂取していきましょう。
※本記事の内容は一般的な情報をもとにしており、効果を保証するものではありません。健康状態や体質によって適量が異なるため、ご自身の体調に合わせてお召し上がりください。